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一期目 前半戦 06年10月
道場破りとは、手塚夏子が魅力的なアーティスト達の手法に迫り、その手法の要素を自分でも試すという実験的試みです。方法は、一緒に稽古場に入り手法についての話を徹底的にして、体で確かめていくというもので「踊っているときの状態はどのようなものか」という問いが基本になります。堅く聞こえるけれど、これらはリラックスした雑談から始まります。
手法とは、学んできたダンスのノウハウの事ではなく「自分にとってのダンスとは何か」という根本的な問いにより、独自に編み出された、マネの出来ない手法のことです。
■手法への接近 (approach to each method) 主な切り口
踊っている時、どうなっちゃってるのか?(When they dance how are they being?)
自分という感覚について(about sense of self)
入り口、又はスイッチ(entrance or switch)
■全体の中心になった話題
表層
↑
ここにはレイヤーlayerが何層もある。
↓
深層
能動的active←→受動的passive
動かされる affect
【福留麻里の手法】
1.EGOが追いつかない(can`t catch up)所で動く
→お腹の空洞が「へー」と言っている。↓
バラバラになってしまう。→繋げたい(根っこrootを感じたい)
2.動きがポンポン出たくなる直前に踏みとどまる。
へーと言っている部分がしゃべる 欲求の根っこを感じ続ける
【スズキクリの手法】
どう弾くかではなく、どう響くかが大切
(どう動くかではなく、どう存在するかが大切という私の感覚に近いのか?
表層と深層を往復する(深層へドップリ浸らない)
対象になる基準を外に置く。→中心(判断する人)←自分という感覚?
「気持ちよくなって、自分という感覚がなくなってしまう」という方向には
行こうと思えば行けるが、危険を感じる。
音を対象化する。具体的方法→そこに鳴っている音などを聞く。倍音を聞く。Fixした反応。
【有田美香子の手法】
現時点で三種類ある。
1.自分の深層を直堀(相手が自分に対して否定するのを前提にして「裸」になる)
2.「振り」にカッチリ入る。限りなく呼吸に近い
3.そこにある何かに対する衝動
1.には具体的な体の捉え方、方向性を決めることで入る。例えば体のセンターに真っ直ぐの線を感じ、手を挙げてその手をその線にあわせる
【Corrie Befortの手法】
ego (sense of self) shape changes
入り口は能動的 - entrance active(色々な状況、音を聞き、モノを見、空気を感じる)
しかし、大きな意味での感情はその感じたことにより動かされる。
それは深くなり浅くなりまた色々な種類の横の拡がりがあり、横にも縦にも限りがない 。
- unlimited emotional state affect
【アベマリアの手法】
衝動が体を突き動かす状態になるのが良い。
潜在意識のみになって、体が何かに動かされているような感じ。
どのようなところでも入り口にできるのが良い。すぐに入れるのが良い。
練習で見つけたこと
色々な状況でもダンスが満ちて流れるように、
体の中に道筋をつくっておくことによって、
本番での可能性が広がる。また楽しめる確立があがる。
同じ事を繰り返すと入りやすい。
自分で自分にのる。
●10月13日(金) Corrie Befort/有田美香子
コリーとは、最初に渋谷のル・デコで、試演会のような催し物を一緒にやった時、初めて会った。ミュージシャン2人と彼女の即興だった。薄暗い室内に窓から少しだけ光が差し込んでいて、その空間の中にしみていくような、美しいダンスだった。上品な中にも小さな破裂や痙攣があって、見ている者の内側を振動させる。
今日の彼女とのやりとりは、まず英語の勉強から始まった。私は殆ど英語が駄目で、通訳もいなかったけれど、手探りで言葉の奥にある領域を探っていくのはとてもスリリングだった。9月に行われたオーストラリアでのエクスチェンジ企画を経て、私は幾つかの英単語を興味深く手探りしていた。その単語を1つ1つ大きな紙の上に書き出して、その言葉について図式やイラストやジェスチャーなどで示してもらう。辞書を引きながら、単語と単語の関係や、使い方の例や、類似性などを見つけながら、少しずつ体に対する言葉の認識を併せていく。そして、ダンスを踊っているときどのような状態なのかという話を始める。
●10月20日(金) 有田美香子
前回の有田さんとは、言葉の奥にある領域が掴みきれず、言葉の森の中で迷子になってしまったようだ。今回は、有田さんが実際にやってみる内容を提案してくれた。「音で相手の深層をさぐる」というものだが、深層というのはそこに何か壁のようなモノがあるときに、そこをつついてみたりして探ることはできるけれども、そういうものが無いときは、探るという行為自体が無効になってしまう。そこには何の目印もなく境目もなく自分と相手の区別もない。それはある時は深く交わり、ある時は離れているかもしれないけれど、コントロールはできないようだ。
有田さんは3つのバージョンで踊る。
その1 自分の深層から激しく掘り出す 世界に否定されるという前提で裸になる
その2 振りにカッチリ入る。 限りなく呼吸に近い
その3 見ているモノに対する衝動で踊る
その1を試してみようと思った。世界が否定していると言う前提、というのは無理だったので、とりあえず、スコーンと入る。つまり急激に「入る」。入るというのは、深層に行ってしまい、自分という感覚から離れていくということ。それを意識的にやろうとするのはとても難しかった。頭の中に有田さんの踊っている状況を思い浮かべたりしてしまい、それも逆効果、色々と意識しすぎて、すぐに浮いてきてしまう。表層の方に。また自分のなりやすい状態に引っ張られる。同じ状態になるべきというのではなく、その手法はいったい何をもって手法なのか、そのやり方、つまりスイッチのようなものが同じであればいいのだ。と思い、もう一度考えてみようと思う。
●10月21日(土)Abe”M”ARIA
彼女の手法→同じ事を繰り返すことによって、入る。衝動が体を突き動かす。何かに動かされている状態になるための道筋を、体の中につくるため、稽古する。自分で自分にのる。
● 10月26日(木)スズキクリ
ダンスにおいて、どう動くかと言うことよりも「どう存在するか」ということが重要に感じるという話をすると、クリさんにとってその話はよく分かると言って、音楽においては、どう弾くかではなく「どう響くか」が重要と感じていると話してくれた。彼の手法→部屋の中の音を聴く。響きというのは周囲の状況が大きい。何かを弾いて放っておく。→その時の響きを感じ取る。メロディーが出てくる。リズムが出てくる。響きを増幅する。リアクションもある。構造的な感覚としてのコラージュ。
●10月27日(金)Abe”M”ARIA 有田美香子
有田の手法→「その1」である、自分の深層から激しく掘り出す(じか堀り)のための、具体的な方法として彼女が実際に作品に使った方法を試みる。体の中心に線のイメージを持つ。片手を挙げ、その挙げた手を中心の線に併せる感覚を持つ。中心の線は、切り裂かれたような鋭い線のイメージ。あるいは切り裂いて内蔵を見せる。能動的に深層へ向かっていく。
アベの手法→最初にプシューと何かポンプのような圧力を感じる。
アベと有田のお手合わせ→お互いちょっと怖々の時と遠慮の時があった。すごく似てる感じがするけれど直接一緒にやると違う所の方が多く見えてくるのが不思議。
自分の手法について発見→二人に比べ、私はどちらかというと能動的に深層の方に行くという感じがしないなと思った。受話器を取るだけと言う感じか?基本的に受動的であって、何かに動かされている感じ。自然な反応が起きてはじめて体が動く。最初にラジオの周波数を併せる。
●10月28日(土)Corrie Befort Abe”M”ARIA
二人のお互いの手法について、私が無理やり英語で説明する。3人それぞれソロをやる。アベさんとコリーのお手合わせ→お互い波長があっているようだった。リラックスして自分のソロをやりつつ、子どものような童心が共鳴する瞬間もあった。かなり激しい接触あり。子どものような無防備な接触だった。
●10月30日(月)福留麻里 スズキクリ