090530 カラダカフェ〜からだの水、水のからだ〜

無事終了しました。ご来場ありがとうございました。


手塚夏子× 佐久間新( ジャワ舞踊家)
カラダカフェとは、リラックスした時空間でコーヒーなどを飲みながら、体についての様々な雑談をするイベントです。ダンサーである手塚夏子が毎回様々なゲストを招き、お客さんを巻き込んでの実験やパフォーマンスも交えつつ、雑談から哲学的なテーマまでも話が広がります。
今回のゲストはジャワ舞踊家の佐久間新さんです。佐久間さんは私にとって、様々な「問い」を与えてくれます。彼が踊るとき、私の体に目に見えないさざ波が沸き起こります。これは比喩、というより、もっと物理的な感触のことで、私のからだの中に、水が注ぎ込まれるように、彼の踊りのエネルギーが細かい粒子となって私の皮膚を貫通し、内側で彼にあわせて蠢くのです。踊りを見て、こんな風になったのは初めてでした。

(佐久間さんのパフォーマンスを見た感想はこちら








2009 年5 月30 日( 土) 
14:30 開店 15:00 スタート
門仲天井ホール



前日におこなわれた、佐久間さんの企画「ピクニック」に参加した手塚のエピソードなどから話が始まりました。

手塚が佐久間さんに出会ったキッカケや、興味の元となった経験などをお話し。そのことを通して、手塚は自分のダンスと佐久間さんのダンスの根底にある共通の部分や、また違う部分の幅を測ってみたくなったので、まずは自分が踊ってみました。

佐久間さんから見ての感想、「違うけれども、分かる気もする」

佐久間さんから手塚のダンスについて二三の質問があって、「体が勝手に動く」ということについて少しお話しました。佐久間さんとの共通の部分として、踊る時に「ラジオの受信状態を良くするようにチューニングする」感覚があることを知りました。

私が以前体験した「体で考える」方法として、ペットボトルに水を半分入れたのを水平にして水を揺らすというのを全員でやってみました。部屋全体に小さな水音が満ちて、とても素敵な時間でした。佐久間さんから見てとても上手な2人の方の揺すり方を見せていただき、違うタイプのすてきなボトルゆすりを参照しました。

佐久間さんが、お客さんにむかって波を送りました。とても大きな波を体に受けて倒れそうになってしまう人がいたり、オペ部屋にいた黒崎さん(館長)が一人で遠かったにも関わらず揺らされたりしました。手塚は、佐久間さんが波を送ろうとしている準備の時に、自分の周りの空気の質が、つぶつぶに変質して行く妙に心奪われました。

休憩を挟んで、後半、佐久間さんが生で踊って下さいました。たまたまいらしてくださった佐久間さんの知人の方にホーミーなどで演奏していただいてのダンスで、佐久間さんの話によれば、スタートするのにいろいろな迷いや戦いがあって、少しずついいキッカケを見つけながら踊られていたという事です。自分にとって嘘が無いか、リアリティーがあるか、とても大切にされている、またそういったことも、ありのままに示して下さった、そういった正直な柔らかい佐久間さんがとても素敵でした。

ジャワの舞踊の型を一部見せていただきながら、物理的な体の仕組みや重さを最大限に生かした動かし方というのを、手塚の体験レッスンなどもとしてお話ししていただきました。そこから、佐久間さんご自身がどのように形や動かし方の細部に実感を得て行かれたかというお話をしてくださいました。

手塚と佐久間さんの方法の間にある共有できる部分や違い、またその幅を観察する手塚の今感じている部分を話しました。両者とも、無意識の領域に対してなにがしかの意識的な方法を見いだしていて、ジャワ舞踊を行う佐久間さんの場合にはどんなことがあるのだろうか?それは音楽の性質だったり、場の空気だったり、聖域である舞台の位置や仕組みであったり、かもしれないし、また語り尽くせない何かがあるのだろう。手塚は、様々な世界のありようや霊的な神聖さと切り離された、ぐちゃぐちゃな日本の都市文化の狭間に生きているというリアリティーがあり、その中で場の様々なレベルの深層と繋がったり離れたりしながら何かを実感しておどっているのだなあ。佐久間さんの何とも言えぬ神聖なありように触れ、自分の立ち位置を照らし出されたような一日でした。

最後に、佐久間さんが野村誠さんとおこなったワークショップで会得されたという「振り子奏法」によるピアノ演奏、もっともダンスに近い演奏、もっとも演奏に近いダンスを堪能し、会を終えました。ピアノの音が聞こえなくなる最後の時間に、今までの音の存在が波のように体に浸透したのでした。

佐久間新(ジャワ舞踊家)| Shin Sakuma
1988年、ガムランを始める。ジョグジャカルタの舞踊家ベン・スハルト氏に出会い、ジャワ舞踊を志す。95年から4年間、インドネシア芸術大学へ留学し、王宮など数多くの舞台に出演する。帰国後は、古典作品以外にも、野村誠、三輪眞弘、鈴木昭男らの音楽のためのダンスを発表する。05年には、野外で即興するI-Picnic を結成し、インドネシア、日本、オーストリアで即興を行い、DVDを制作する。07年にクレムス現代音楽祭(オーストリア)、08年にソロ・エスニック音楽祭(インドネシア)に出演する。音とダンス、ダンスと日常の境界を探る試み、障がいのあるアーティストとのコラボレーションを展開中(佐久間さんのブログはこちら)。